アツシ編 6

 

ハルを筆頭とする、

第二ハレムの仲間たちの待つ集団調教室に、

アツシとイサムが到着した。

主人、白虎、金剛の3人も入室する。

淫猥な情景には慣れている一同だが、

後手に手錠され、性器に紐をくくられた全裸のアツシを、

着衣のイサムが紐を引いて連れてきたことには、

さすがに驚いた。

(まさか、この短期間に、ここまで調教が進んでいるとは…)

ハルもショックを受ける。

集団調教室の中央には、いかにも高価そうな、毛足の長い、

暖色の、丸い大きなトルコ絨毯が敷かれている。

この上で、イサムによるアツシのアナル処女破りの儀が、

粛々と執り行われることになったのだった。

イサムが、絨毯の中央に、アツシを引いてくると、

金剛がアツシの性器に結ばれた紐を解いてやる。

だが、アツシの勃起の根本を切なく締め付けている、

淫虐な性器拘束帯は、装着されたままであった。

第二ハレムの一同は、2人の周囲を大きく取り囲んで、

見学することを命じられた。

金剛は、2人の近くにスタンドを立て、

デジタルビデオカメラを設置した。

交接の様を、斜め上のアングルから撮れるように、

スタンドの高さとカメラの向きを調整すると、

自動撮影モードで作動を開始させた。

その後、金剛は、見学中の奴隷たちの監視に就く。

白虎の命令により、ハルが介添人を勤めることになる。

主人は、交接の場の傍らの特等席に置かれた椅子に座り、

ショーの開始を待った。

「なにしろ、ズブの新人同士の公開初交尾など、

このハレムでもめったに見られないレア・イベントだ。

イサム、アツシ、最高のカップルであることを、

ここで私に証明してみせるがいい。期待しておるぞ」

主人は、いつになくウキウキした声で命じた。

 

 

まず、イサムが、ハルに手伝ってもらいながら、

黒タキシードとパンツを脱いで全裸になった。

さっきまでいた調教室で、すでに射精は2回していたにも関わらず、

イサムの性器は、凄まじい発情を示して最大限に勃起していた。

  

まずは、白虎の命令で、

アツシは後手に手錠したまま跪き、

イサムの性器をひとしきりしゃぶって唾液で湿らせる。

次いでアツシは頭を下ろし、頬を絨毯の床に付け、

尻を上げて、イサムの前に肛門を晒した。

「イサム、おまえの大好きなアツシの肛門を舐めてあげなさい」

白虎が命ずると、

跪いたイサムは、両手で、アツシの尻を左右に拡げ、

肛門をなめる。肛門の中まで舌を入れてよく湿らせる。

アツシは、未知の愉楽に身悶える。

(ボクのお尻の穴を…イサムが舐めてる…)

肛門などという、うんこの出る汚い穴を、舌で舐めるなんて、

以前のアツシには想像もつかないことだった。

もちろん、イサムもそうである。

しかし、今のイサムは、アツシの肛門なら、

たとえ、うんこがたっぷり付いてようと、

いくらでも舐めてみせる自信があった。

(アツシくんのお尻の穴、可愛い…ずっとこうして舐めていたい…)

(イサム…そんなにしたら、ボクのお尻の穴、溶けちゃうよぉ…)

アツシは、おしめの中にうんこを漏らし放題だった、

赤ん坊の頃に戻ったような、蕩けるような安らぎすら感じていた。

「ふふふ、白虎よ、アツシのあの表情を見たか?

1年も調教した性奴隷でも、あんな悦びに満ちた顔は、

なかなか見られんぞ。涅槃の極致とでも言おうか」

主人は、さも嬉しそうに言う。

「御意。私も久々に興奮を抑えきれません」

白虎も熱い息を吐く。

主人のズボンの前が、勃起で突っ張ってしまったので、

シオンが傍らに呼ばれ、主人のズボンの上から、

怒張した逸物を、右手でそっと愛撫するように命じられた。

 

イサムはアツシの腰を掴み、勃起の先端をアツシの肛門に当てる。

「イサム、ゆっくり腰を撚るようにして押し込んでいくんだ。

アツシが痛がったら、無理してはいけない」

ハルがイサムの勃起を掴んで介添えしてやるのだった。

熟練したハルの手による導きで、

イサムの性器はなんとかアツシの中に挿入されていった。

「ううっ」

アツシは、痛みはほとんど感じなかったが、

張形やアナルバイブと異なる、その熱い肉の感触に、

思わず呻き声を上げた。

(ああああ…入ってくる…入ってくる…入ってくるよぉ…

イサムのおちんちん…おっきくなったおちんちんが…

ボクの、ボクの恥ずかしいお尻の穴に…)

アツシは、嬉しい、と思ってしまう自分が恐ろしかった。

少年たちの恥部と恥部の合体が、成功した。

「ああああああっ」

「ああああああああああ」

ついに、引き返せないところまで来てしまった、

という実感に、稚い二人は衝撃を受け、

二人で繋がったまま奈落の底に堕ちていくかのような、

愉楽の極とも絶望の断末魔ともつかない声をあげた。  

「イサム、慌ててはいけない。落ち着いて」

あまりの興奮に、焦って激しく腰を振ろうとするイサムを、

ハルは押しとどめ、すぐに射精しないように、

ゆっくりと慎重に腰を動かすように指導する。

 

ハルは、この仕事の間、勃起を我慢できず、

ブリーフの前を突っ張らせてしまう。

布地にじっとりと、カウパー液まで滲み出てくる。

ハルは、二人の運命を心から気遣っているのに、

身体はエロに反応してしまう自分に絶望する。

 

アキラとルカも、イサムとアツシの奮闘を見て、

かつて自分たちが、ここで初めて公開セックスを

させられた時のことを思い出してしまい、

両者とも激しく勃起してしまう。

私語は禁じられ、金剛が監視しているので話せないが、

アキラとルカは、テレパシーのように、

相手の胸中を察しあう。

 

アキラは、まだウブだった頃のことを、

ゆくりなくも思い出してしまったせいか、

いつになく恥ずかしそうに、両腿をきゅっと閉じ、

もどかしげに擦り合わせ、腰を少し引いてしまう。

「こら、なんだその新人みたいな真似は。アキラらしくもない。

ちゃんと腰を前にせり出して、おまえの興奮している部分が、

皆に、よく見えるようにしておきなさい」

白虎が見咎めて叱咤する。

 

レミとソウタも、同じく勃起してしまい、

一瞬顔を見合わせて赤面する。

お互い、自分たちもやりたい、という気持ちが通じ合う。

この2人は、全員の前ではないが、2人一緒に夜伽に呼ばれた時に、

主人の目の前で交接させられたのだ。

 

ツバサは、思わず目を背けてしまい、金剛に見咎められ、

白虎に報告されてしまう。

「ツバサ、目を逸らしたら承知せんぞと言ってあったはずだ。

だいたい、おまえのようなドスケベが見たくないはずあるまいが。

自分の欲望をごまかすなと何度言わせるのだ」

白虎は厳しく叱責する。

ツバサは、いずれ自分の弟もここに誘拐されてくることを、

すでに察しており、いずれ同じように交尾させられる自分を、

リアルに想像してしまったのだ。

しかし白虎の命令で、2人の交尾を見ているうちに、

次第に激しく興奮してきてしまう。

犯されているアツシの姿が、自分の弟、ケンジの姿と重なり、

自分はイサムと一体化していく。

ツバサは、自分が弟との交尾を、心の底で望んでいることを悟る。

 

イサムは左手でアツシの腰をガッシリとつかみ、

前に回した右手で拘束されたアツシの性器を弄りながら、

慎重にそっと腰を動かす。

「はぁはぁはぁはぁはぁ…」

「イサム、焦らないで、ゆっくり息をして」

「はぁぁぁぁぁんっっっ!」

ハルのアドバイスも虚しく、イサムはやはり長くは持たず、

3分ほどでアツシの中に射精してしまう。

「はううっ!」

アツシは、熱いお湯で浣腸されたような直腸の感覚に、

反射的に肛門括約筋を蠢動させ、イサムの性器を絞り上げる。

(ああああ、イサムの精液が、ボクの中に…)

妊娠しちゃうっ!とアツシは一瞬心のなかで叫ぶが、

すぐに、そんな事を思ってしまった自分が恥ずかしくなる。

「くくく、いくら淫乱の血が濃いとは言っても、

やはり経験が足りないか…それはそれで初々しくてよいぞ」

主人は毒々しく笑って言う。

シオンにズボンの前を擦られ続けて、

海千山千の主人も若返ったように昂ぶってきてしまう。

 

アツシの手錠が外された。

アツシは、今度は仰向けになり、

両腿を自分の両手で抱え上げて、イサムに肛門を見せた。

イサムは、ハルの指示を仰ぎながら、正面から挿入する。

ハルは、イサムの腰使いを指導しながら、アツシの前立腺を、

最も上手く刺激する角度で突く方法を教える。

「ああ、ああ、イサムぅ、イサムぅ、ダ、ダメ、そ、そんなっ、

そんなにしたらダメェッ…きき気持ちいいっ…気持ちいいよぉ…」

アツシは、前立腺の快感に狂乱し、イサムの名を呼びながら、

よがり啼き、悶え狂う。

「アツシくん、気持ちいいの?お、お、お尻の穴が、気持ちいいの?

ボ、ボクのおちんちんが、お尻の穴に入って、気持ちいいんだよね?」

「うん、キモチイイッ…キモチイイのぉ…イ、イサムの、おちんち…

お、おちんちんで…ボク…ボクの、お尻の、あ、穴、穴が…」

 

所詮は経験の少ない未熟な新人同士の、

ままごとのような交接だろうと、主人はやや見くびっていた。

ところが思った以上の淫らな展開で、思わず相好を崩した。

主人は興奮しきってしまい、不覚にもズボンの中に漏らしそうになり、

あわてて、シオンの愛撫をやめさせた。

 

イサムとアツシの対面での交接は10分近く続いた。

アツシとイサムの痴態を見ながら自然に勃起してしまっている、

ハル・アキラ・ルカ・レミ・ソウタ・ツバサの6名は、

2人の近くを取り囲み、パンツを膝まで下ろして、

腰を突出してオナニーをするように命じられる。

ツバサだけは、乳首オナニーを命じられる。

昨晩の夜伽で、主人の調教を受け、

既に乳首の刺激のみでの射精を成功させているのだ。

ツバサは、他の5人と同様、パンツを膝まで下ろして、

勃起を前に突き出しながら、シャツもまくりあげて胸を出し、

既に膨らんでいる両乳首を、両手の指先でつまみ上げて揉んだ。

それまで勃起させていなかった、他の奴隷たちは、

白虎に厳しく叱咤され、自分の乳首を弄ってもいいから、

イベント中はずっと勃起させておくよう命じられた。

全員、あわてて命令に従い、シャツの上から自分の乳首を弄り、

すぐに全員、ブリーフの前を突っ張らせた。

 

イサムは自分が射精する寸前に、

アツシの性器拘束帯をはずし、アツシのものを扱く。

「イサム…イサム…好きだ好きだ好きだよぉ…」

「アツシくんアツシくんアツシくん…あああ愛してる愛してる…」

イサムとアツシは、互いの名を呼び合いながら、

同時に昇りつめていく。

「ふああああああああああああんんんっっっ……」

イサムは、魂の燃え尽きるような絶頂声をあげながら、

アツシの尻穴奥深く、2度目の中出しをしてしまう。

どっくぅ〜ん、どっく〜んっ、どっく〜んっ…

暖かいアツシの直腸の中で、イサムの性器の脈動は、

一滴残らず射精し尽くしても、止まなかった。

一方、アツシは、長時間堰き止められ、煮詰められた、

濃厚な熱い練乳を、自分の顔にまで飛ばした。

びゅっくびゅっくびゅっくびゅっくびゅっくびゅっく……

「ひゃうんっ、ひゃうんっ、ひゃうううんっっっ……」

アツシは、ガクガクと絶頂の痙攣をしながら、

裸身をピーンと弓なりに仰け反らせ、

可愛らしい舌を出して、アヘ顔で天井を仰ぎつつ、

仔犬の悲鳴のような、愉楽の啼き声をあげ続けた。

「おおお、これはいい!期待以上の出来だ!」

主人は思わず椅子から立ち上がり、満足の声を上げた。

絶頂に至ったイサムとアツシの痴態を見た6名は、

ツバサ・レミ・ソウタ・ルカ・アキラ・ハルの順で、

次々に射精し、2人の裸身に精液をかける。

中でもツバサは、弟のアヌスの中に放出している自分を、

ありありとイメージしながら、

乳首オナニーのみで一番最初に達したのだった。

(ケンジ…兄ちゃんを許してくれ…)

ツバサは心の中で弟に詫びた。

  

イサムとアツシは、仲間たちの精液を全身に浴び、

深くつがったまま、しばらくビクンビクンと痙攣し続けていた。

 

数分後、2人は引き離された。

半勃ち程度に萎えたイサムの性器の先端からは、

トロリとしたミルクが粘っこい糸を引いて滴りおちる。

アツシの肛門は紅く開き、中出しされたイサムのミルクを、

じゅくじゅくと漏らしていた。

アキラやツバサたちは、金剛に渡された濡れタオルで、

イサムとアツシの汚れた身体を拭いてやる。

ハルは、アツシの尻の下に、タオルを宛てがい、

指で優しく中のミルクを掻き出して、後始末をしてやる。

「ハル、ありがとう」

アツシは朦朧となりつつも、ハルに礼を言う。

 

「アツシのアヌスの処女をイサムに取られたのは惜しいが、

それを補って余りある楽しさだったぞ。実に堪能した。

白虎も、ご苦労だったな」

主人は、満足しきって、先に集団調教室を出て行った。

全員最敬礼して主人を見送る。

 

「アツシによるイサムのアナル処女破りは、

あらためて後日行うことにする」

と白虎は2人に告げた。

 

 

2

淫靡な儀式は、ようやくお開きとなり、

第二ハレム奴隷たちは、全員ねぐらへと帰った。

イサムとアツシは、疲労困憊しつつも、愛しあう者同士の、

記念すべき初セックスが、無事成就した幸福感にうっとりしている。

恋の力が、羞恥や罪悪感をも凌駕してしまったかのようだ。

一方、ハルとツバサは、それぞれ自己嫌悪で凹んだ。

ハルは、イサムとアツシを自分のところに呼んで、

まず、2人の交接に自分が興奮しきってしまったことを謝った。

2人はなんとも思ってないことを告げる。次にハルは、

「これから2人は、つがいの調教も続くだろうけど、

さらに他の子との絡みも増えてくるし、

もうすぐ、御主人様にアヌスも犯されるはずだ。

それをどちらかが、あからさまに嫌がったりすると、

2人ともひどい処罰を受けることになる。

厳しい事を言うようだけど、覚悟してね」

と告げた。

「わかったよ、ハル。正直、イサム以外の子とエッチするのは、

気が進まないけど…ボクたちは大丈夫だよ」

とアツシは言って、イサムを見る。

イサムも頷いて、

「ハル、心配しないで。ボクたち約束したんだ。

何があっても友達でいようって。だからもう、

夜伽も、調教も、拷問も、死ぬことだって怖くないよ」

ハルは、イサムとアツシの心が崩壊していないことに、

とりあえずホッとする。

特にイサムは、急に大人びたようである。

調教が長引いたため、まだ入浴していなかったイサムとアツシは、

仲良く連れ立って、共同浴場へ行く。

 

ハル・アキラ・ルカ・カムイの4人で少し会話。

カムイは、イサムとアツシの恋愛感情の暴走を心配するが、

ハルとアキラは、たぶん大丈夫だろうと判断する。

アキラとルカも、一時は強い共依存関係にあったのだが、

今は落ち着いている。

「あの頃は余裕がなかったから、ルカのことしか見えてなかった。

ルカが、他の子と絡んだり、夜伽に呼ばれたりすると、

嫉妬で少し胸が疼いたよ。そのくせ、自分が夜伽の時は、

御主人様とちゃっかり楽しんだけどさ。

ルカも同じだったと思うけど、周りが見えるようになってきたら、

ハレムのみんなの事もだんだん好きになった。

今でもルカのことは一番好きだけどね。

もしルカが死んだら、ボクも後を追って死ぬよ」

アキラは、ルカの顔を艶然と見つめて言った。

「おいおい、勝手に殺すなよ…」

ルカは赤面しながら照れ隠し。

 

(みんな強くなった。でも、イサムもアキラも、

“死”という言葉を口にする。ボクたちはまだ子供なのに、

こんなにも、死を身近に感じるなんて…)

ハルは自分の胸に手を当てて、心臓の鼓動を感じる。

(なんだか、胸が重苦しい…

死神にでも睨まれてるような気がする。

もし、ここが警察に見つかったら、

ボクらは全員、即座に殺されるのだということを、

御主人様が明言して、はっきりと知ってしまったからだろうか?)

ハルは、物思いに沈む。もともとは内向的で、

鬱々と暗いことばかり考えている子供だったのだ。

(この死の予感は…もしかしたら…

本当のボクは、重い病で死にかけていて、

深い眠りの中で奇妙な夢を見ているだけなのかもしれない。

このハレムの淫らな出来事のすべてはボクの妄想で、

こうしてハレムの仲間のことを、あれこれ気遣って、

思い悩んでいるのも、死ぬ前の幻覚なのかもしれない…)

バカバカしい、とハルは自分ツッコミすると、自嘲的に苦笑した。

(本当に自分が病気で死にかけているだけなのなら、

その方がよほど気楽だ…)

 

3

ジュンが、夜の補習調教に呼び出される。

ハルは、ジュンが焼き印の処罰をされることを覚悟し、

暗然とした気持ちで、ジュンの帰りを待った。

シオンとユヅルがハルのところへ来て、励ます。

だが、ジュンは、僅か30分ほどで、何ごともなく帰ってきた。

ハルは「処罰されなくてよかった」とジュンに言うが、

ジュンは、言葉を濁し生返事である。

何か異変を感じ取ったハルは、他の仲間に聞かれないように、

共同洗面所に2人だけで移動し、

何があったのかと、ジュンを問い詰める。

ジュンは口ごもっていたが、事情を話し始める。

 

ジュンの話では、焼き印の処罰は、

単に延期されただけであった。

そして、その執行は4日後。

それは、ジュンの12才の誕生日でもあった。

この第二ハレムは精通した12才までの少年が所属するので、

ジュンは(解雇などがない限り)あと1年は、

ここに所属することになる。

結局、処罰は回避できないということで、ハルは落胆した。

しかし、ジュンはそのことについては、

さほど気にしていないようだ。

「それは最初から覚悟してたから、別にいいんだ。

やるなら早くやってくれよとは思ったけど。

ただ、麒麟様が、

“処罰はおまえの誕生日に行う”と告げた後に

“おまえの運命の日だ”と付け加えたのが、

少し気にかかっているんだ」

「…運命の日、だって?」

「それ聞いて、その日に、もしかしたら…

…ボクは、殺されるんじゃないかなって気が…」

ジュンが何気ない風に漏らした言葉に、ハルは思わず、

「そんなはずはない!」

と声を荒らげて強く否定してしまう。

ハルも何かキナくさい、不吉な予感を覚えたため、

必死で打ち消したのだ。

(狼狽したのはまずい…ボクまで不安を露わにしたら、

よけいジュンを追い詰めてしまう…)

「御主人様は、理由もなく奴隷を殺すということだけは、

絶対しないはずだ。この暗黙のルールが破られるはずはない。

ボクの知る限り、今までも破られたことはない」

ハルは、強引に断言した。

自分の不安を態度に表すまいと、強い意志で平静を装う。

「う〜ん、殺されるというのはちょっと違うかな。

むしろ、殺されるより、もっとひどいことが起こりそうな気がして」

「なんでそんなことを思ったの?」

「ちょっと不思議な雰囲気があって、

なんだか、そんな気がするんだよ…

そう、あの鬼の麒麟様が妙に優しかったんだよね。

補習では、相当ひどいことをされると覚悟してたんだけど、

ごく簡単なアナル調教だけで終わって、

その後、麒麟様が…ボクを一瞬抱きしめてくれたんだ…

…ボクも変なんだけど、まるでお父さんみたいだと思ったよ。

そして麒麟様はすぐに“しまった”という顔して、

“奴隷に同情するとは私も焼きが回った”とか呟いて、

その後はボクと一度も目を合わさなかった…」

ジュンの話に、ハルはゾッと背中に冷たいものが走るのを感じた。

あわてて無理やり微笑んでみせる。

「そうか、たぶん君は麒麟様に気に入られたんだよ。

よかったじゃないか」

「ありがとう、ハル。

君を不安にさせるつもりはなかったんだ。ボクは大丈夫だよ」

ジュンは静かに微笑んだ。

ハルは自分の心の動揺をジュンに見透かされていたことを悟る。

「ジュ、ジュン…ボクは無力で、君のために何もできないけど…

どんな時でも、ボクたちは仲間だ。そして永遠に友達だ。

ボクの言うこと、わかるよね?…」

ハルはもう必死さを隠さない。

「うん、わかるよ…」

ジュンは囁くように言って、消え入るように、

先にハレムのねぐらへ戻った。

(ジュン…ボクはどうしたら…)

ハルは煩悶する。

 

 

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